Episode19 フリースペースで折り紙

療養生活で少しずつ身体が休まってくると、今度は社会復帰への焦りが出始めた私は、引きこもりの居場所を提供しているフリースペースのような支援場所を探してみることにしました。

引きこもりのための支援はまだ少なく、市役所や保健センターなどで紹介してくれるのはB型・A型就労施設や就労支援施設などが主で、引きこもりからリハビリとして外へ出たい私にとって本格的な就労支援はまだ敷居が高いと感じました。

私のように体調は比較的落ち着いているけれど、就労するほどの元気に自信がない方は多くいらっしゃるのではないかと考えています。

そもそも、再び社会復帰へ一歩踏み出すことはとても勇気と体力を必要とするものです。

公的機関へ引きこもり自ら赴かなければ情報やパンフレットを得られない状況は、本当に引きこもりを社会復帰へと導く気があるのか?と大変疑問に思いました。

その後、いくつかのフリースペースを利用してみて私が気に入ったのは、高校生の時にほんの少しだけ通院していた心療内科が運営しているフリースペースでした。

インターホンを押すと、専門のスタッフさん二人が私を温かく迎え入れてくれます。

利用者は基本的にいつも私一人だけでしたが、社会復帰の第一歩として少しでも外に出ることを目標としていた私にとっては、黙々と作業に集中でき、落ち着けるとても居心地の良い空間だったと思います。

フリースペースなので、特にやることは決まっていません。

悩みを相談してもいいですし、読書や工作をして過ごすのも自由です。

部屋の壁に目をやると、誰かが作った折り紙が貼られていましたが、まだまだ折り紙が貼られていない壁は何だか寂しそう。

折り紙なんて子供の頃折っていたくらいでしたが、もっと部屋の壁を折り紙で賑やかくしたいと思い、久々に折り紙の説明本を開いて作品製作に取り掛かりました。

私が一番最初に折ったのは薔薇の花でした。

この薔薇の花を、より華やかな作品として仕上げたいとおもった私は薔薇の花の折り紙を複数枚たくさん折りました。

可愛いピンク色のお菓子の空き箱に紙パッキンを敷き詰め、その上に色とりどりの薔薇の花を満遍なく乗っけたらフラワーボックスの完成です。

私は折り紙を折ることを通して何か一つの物事を最後までやり遂げることのやりがいや達成感を感じられるようになり、折り紙がどんどん楽しくなってきた私は毎週フリースペースに通い、夢中で折り紙を折りました。

季節の風物詩を折り紙で表現したリース。

ラッキースターという虹色のグラデーションが綺麗な瓶詰めされた星の立体作品。

スタッフさんと一緒に作った水色の台紙いっぱいに咲く鮮やかな朝顔など、フリースペースの壁は私が初めてここへ来た時よりもたくさんの作品で溢れていました。

ここのフリースペースでは引きこもり・不登校の親に向けた講演会も開催しており、講演会に来た親御さんたちやスタッフの皆さんが私の作品を見た時に「わぁ、きれい。」と感嘆の声を漏らしてくれるのがとても嬉しかったです。

それがまた私のやりがいに繋がっていく好循環を生み出し、私は折り紙を折ることが大好きになりました。