父は私が高校生で不登校になった時から、私が引きこもるようになった理由をどうしても探したいようで、ある日突然私の部屋に来て「引きこもりになった理由を話してくれるまでこの手を離さない」と言って私を拘束したのです。
父がここまでの強硬手段に出てくるとは思いもしなかったので、男性の力強い手に自由を奪われ、身動きが取れなくなるのはとてつもない恐怖を私に与えました。
引きこもりになった理由は父の面前DVやいじめで積み重なった疲労や、生理が重いこと、大人しいがゆえに学校で友達と上手く話せないことなど様々な理由が複雑に絡み合い、綺麗にまとめて話すことが難しいのです。
最も割合を占めている理由は父の面前DVなのですが、それを言ったらもっと父の怒りを買ってしまう。
本当の理由を言えないように脅しておいて、知りたいだなんて矛盾も甚だしいと思いました。
モラハラな父にとって一体何を答えるのが正解なのか分からなくなってしまった私はしばらくの間、口を噤んでしまいました。
一向に緩まない父の手。
父は基本、身体的暴力は振るわない人ですが、一度だけお箸を頭の上に突き刺されそうになったことがあります。
言葉の暴力から身体的暴力に発展することもあるので油断なりません。
このまま手首を捻られたり、痛め付けられたりしたらどうしようという妄想が沸いてきて、手首を強く握られているのがとても怖くなってきた私は大声で母に助けを求めました。
運良く母に声が届き駆け付けてくれたので、父はようやく手を解放してくれました。
そして私は父に
「お父さんが怒鳴ることがとても怖いからやめてほしい。それが理由です。」と、言いました。
父が怒鳴ることが悪いことなのは家族の中で指摘してはいけない禁句の言葉なのですが、追い詰められた私はここに来て初めて本当の気持ちを伝えました。
理由を聞けて一応納得した様子の父でしたが、父はとんでもない交換条件を打ち出してきたのです。
それは「怒鳴るのをやめる代わりに、今後からはお前にもっと厳しくする」という条件でした。
意味が分かりません。
説明するのも難しいのですが
恐らく父は怒鳴ることが染み付いていて、誰かを責めることでしか自分のストレスを解消できないようになってしまったのでしょう。
たばこやアルコールを手放せないのと同じです。
暴力に依存し、その手段を取り上げられるのがきっと怖いのです。
暴力をやめることに身代わりの代償を必要とするなんて無茶苦茶な話ですけれども、私もこれ以上傷付いてタイマンを張る余裕はないので、この話を無かったことにするための和平の手紙を私は半ば強制的に書くしかありませんでした。
文章の一部を抜粋して手紙の本文をここに書き残します。
『金曜日は私の本音を聞いてくれてありがとう。
あの日は考えがまとまっていなくて、不満ばかりを口にする形になってしまい、パパを傷付けてしまいました。
引きこもりになった本当の理由は話したけれど、それは気持ちを伝えただけであって、パパが悩む必要も、飲み込む必要もありません。
なので、私なりに受け入れることにします。
だからパパも私もいつも通り、今まで通りの生活を送りたいです。カウンセリングに出なくても大丈夫です。
これが今の私の気持ちです。』
この手紙を支援者の方に見せたら、子供にこんな手紙を書かせる親がいるのかと驚くような悲しいような顔をしていました。