Episode17 完全に壊れた心

通信高校で高校3年生の卒業資格を無事に1年で取得し、私は専門学校へと入学しました。

ですが、父の面前DVやいじめで蓄積された疲労はそう簡単に解消されるはずもなく、専門学校は夏休み明けから不登校になり中退。

何しろ父の面前DVは当時、現在進行形で続いていたのですから戦場で気が休まるはずがありませんでした。

この頃も母に向かって怒鳴り、物に当たる行為はずっと定期的に続いていました。

目についた時など突発的に家が片付いていないことに怒鳴り始め、物を倒して母を何時間にも渡り責め続ける声や物音は家中に響き渡り、自分の部屋にいても音が貫通してすかすかの防空壕に避難しているようでした。

戦場や災害が発生している現場というのは、目を覆い、耳を塞げば逃避出来るものじゃないのです。

怖すぎて硬直するしかなす術が無くなります。

幼い頃、まだ無力だった私は、大人になればきっともっと精神的に強くなって父が怒鳴っていても自分で自分の身を守ることが出来るようになる。受け流すことが出来るようになる。

そう信じて自分が大人に成長するのを待ちました。

ですが、どうしたものでしょう?

年月が経てば経つほどに私も心は磨耗し、繊細になり、弱り果ててしまったではありませんか。

私の弱さは内側にも外側にも侵食して牙を剥きました。

心が限界に達した私は自傷行為に手を出し、頻繁に母に向かって暴力を振るい、物に当たり散らしながら泣き叫ぶようになってしまったのです。

(ばれないよう父が仕事に行っている昼間に暴走していました。)

ハサミで何度も切り付け、深く抉られ、赤黒い血が滴る腕。

父が今まで理不尽に怒鳴ってきたことを謝罪しないのならお前が謝罪しろと母を罵倒しながら、部屋中に響き渡る悲鳴のような泣き声と狂ったような叫び声。

母が父の精神的DVから逃げる勇気が無いために私は道連れにされ、一緒に我慢を強いられてきたのだと、部屋中の棚やテレビ、テーブルをひっくり返して物に当たり散らし、母を身体を殴り、髪を引っ張って土下座までさせないと気が治まらなかった私。

(今だからこそ暴力をカミングアウト出来るようになりましたが、本当はこうやって書くのも憚られるほど自分の行いが恥ずかしいです。)

私はありとあらゆる父が怒鳴った、酷い言葉で傷つけてきた場面を何度も何度も脳内にフラッシュバックしては、強い憎しみを抱き、酷く悲劇的になり、今までの軋轢でピシピシと危険な音を立てていた身体と心は完全に壊れてしまいました。

そんな私に付けられた病名は不安障害とPTSD。

なぜ被害者である私が不安障害という病気を患い、あたかも歪んだ人間を矯正するためのような治療や投薬を受けなければならず、父のDV行為は誰からも非難をされないのか。

私は悔しくて堪りませんでした。

虐待を切り抜ければ、人の痛みに寄り添えるような強い人間になれると何となくそう思っていました。

でも現実は正反対。

暴力、怒声、物の破壊。