Episode14 スクールカーストの隔たりを超えて

「おはようございます」

一言だけ挨拶を交わして私は黙々と勉強に取り掛かる。

人と話すのが苦手な私にとってはとても落ち着ける心地よい空間。

私が通っていた通信高校は広いひらけた教室と個室ブースになっている教室が用意されており、私は入学式で話しかけられたりりあちゃんに会いたくなくて、徹底してりりあちゃんの登校日を避けて個室ブースで勉強をしていました。

ですがある日…

不定期な曜日に登校してきたりりあちゃんに遭遇してしまったのです。

せっかく中学、高校と一緒だった加害者達と離れられて安心した学生生活を送れると思っていたのに、またいじめられたりからかわれたりして窮屈な学生生活に逆戻りしてしまうのだろうかと、暗い気持ちで私は広い方の教室へと入っていきましたが、その不安は杞憂でした。

いじめの加害者に似ているからという先入観から苦手意識を感じていましたが、りりあちゃんは私に気さくに接してくれて、話しているうちに少しずつ緊張が解れていきました。

いじめられるかもと怯えていたのが少し申し訳なくも感じました。

一番楽しかったのは自分でショート動画が作れるアプリを使って面白おかしく映像を繋げて遊ぶことでした。

勉強は捗りませんでしたが…不登校になってから短時間の登校だけでも疲れてしまうはずなのに、楽しく遊んでいるとあっという間に下校時刻。

先生に促されて帰宅するほど時間を忘れて学校を楽しんでいました。

それからは個室ブースから広い教室で勉強するようになると、色々な生徒と交流する機会が増えました。

イラストをお互い黒板に描き合ったり、おすすめのゲームについて熱く語ったりしてくれる子。

緊張から声が出せなくなりボイトレに通っている子。

トイレに閉じ込められるなど、酷いいじめに遭ってきた子。

家庭の事情で友達の家の家政婦をやっている子。

学校へ登校しようとすると熱が出てしまい、なかなか学校へ来れない子。

理由は様々でした。

りりあちゃんはクラスメイトからお財布を盗んだ犯人に仕立て上げられ、冤罪で謹慎処分の身となったのですが、馬鹿らしくなってしまい自主退学して通信高校へ転校してきたそうです。

みんな色々な事情を抱えて通信高校に通っているけれど、教室に温かく迎え入れられ楽しそうに笑っている姿を見ていると、ここにはスクールカーストの隔たりを越え、一人一人の個性が潰されることのない空間が広がっていて、とても心地よい空間だと思える。

それが私の通った通信高校でした。

体調の優れない生徒も多かったので思うように仲の良い友達全員が集合することは難しかったですが、一緒に登校出来た日は学校帰りにお店へ寄り道をしたり、カラオケをしに行ったりしてたくさんの良い思い出が出来ました。