断りのメールを送信して、携帯の電源を切って無視を決め込んでから早1ヶ月。
私は下校途中、校門を出てすぐの道端で加害者達から待ち伏せを食らい窮地に立たされていました。
どこにも逃げられず、ただ俯いて硬直する私。
連絡を無視するだけで加害者が折れてくれるわけないと思ってはいましたが、いざ本人達を目の前にすると足元がすくみ、更なる意思表示の度胸を試されているようでした。
関わりたくなさそうに私を無視してただ横を通り過ぎていく大勢の生徒達。
もう学校は眼前にあり、下校時刻は教師も外で生徒を見送っているのに誰一人として助けを呼んでくれる人は居ませんでした。
誰か助けて。
そう思ったその時。
近所で一番仲が良かった生徒とその友人が楽しそうに二人でお喋りをしながら私の横を通ったんです。
助けてくれるんじゃないかと僅かな希望を抱きました。が、それはすぐに裏切られました。
二人の生徒は私の存在なんて無かったかのように私の真横を平然と歩いていくではないですか。
極めつけにその近所の友達は私の方を振り返り、一瞥して、何も見なかったようにお喋りをしながら去っていきました。
…絶望的な状況。
自分のことを助けられるのはもう自分だけしか残っていないのだと諦めに似たような気持ちをその時感じて、私は震える声で精一杯の意思表示をしました。
主犯格はそう吐き捨てて、いじめの加害者達と取り巻きは帰っていきました。
怒鳴ることしか脳のない父親。
見て見ぬふりで傍観者の母と生徒達。
何一つとして役に立たない学校教師。
何もかもがクソだと思いかけましたが、そんな私を唯一救ってくれたのは
「帰ろ。」
「…うん。」
親友の理絵ちゃんでした。(仮名)
私はこの時、理絵ちゃんと一緒に下校している途中だったのですが、私がいじめの加害者達に問い詰められている間中、理絵ちゃんはずっとずっと傍に居てくれたのです。
今回のいじめの主犯格、K。
少しでも調子に乗っているとKに今までもたくさんの生徒達が干されて傷付いてきました。
小学生の頃、理絵ちゃんはKにいじめられてはいませんが、その恐ろしさから教室に入れず、保健室登校を余儀なくされていたくらいです。
恐怖から解放された安心感から、ぐずぐずと泣きながら歩く私の隣で、理絵ちゃんはこう言いました。
「Kは一人じゃないも出来ないなじゃくて、一人で何でも出来るから怖いんだ。」
この言葉はとても私の記憶に残っています。
私だけじゃない。みんないじめられるのが怖いんです。
だから、誰も助けを呼んでくれなかったことも、近所の友達に無視されたことも恨んでやろうとは思いませんでした。
そんな恐ろしい状況の中でも理絵ちゃんが隣に居たことは私にとってどれだけ大きな救いになったことでしょうか。
私はここでようやくいじめから逃げることが出来ました。
ただ、私一人が頑張ってもいじめの範囲や影響というものは大きく深く、縁を切ったから終わるような簡単な問題ではありませんでした。