Episode04 目に焼き付いたトラウマ(後編)

片付けをやってもやっても、父はまだ片付いていない場所が気になるのか怒鳴ることをやめることはなく、ある日突然、大爆発を起こしました。

母を怒鳴り付けるだけでは飽きたらず、頑なにごみを捨てない祖母とも直接口論を繰り広げ怒りが頂点に達したのか、がむしゃらになって自分の気に入らないものを断りなく捨てていきました。

その日はあまりにも父の怒りが収まらず、土蔵に収納していた物まで引っ張り出して自分の気が済むまで捨て出しました。

しかし、土蔵に収納していた物は祖父母の必要な物でした。

本人が必要としている物を自分の判断でゴミと見なし、勝手に捨ててしまう父の行為は家族に亀裂をもたらし、普段は仲裁に入らない祖父が家の主として怒りの収まらない父にこう言いました。

自分達が病気で動けなくなったり、亡くなったときには好きなように片付けてくれていい、と。

祖父が仲裁に入ってくれたおかげで父の暴走は止まりましたが、父はその後数日間ふてくされ、仕事以外は自分の部屋に籠りっぱなしで母が運んできてくれた食事も拒否する始末でした。(ま、結局は食べるんですけどね)

家という閉鎖された空間のなかで暴君となり、歯向かえない母を怒鳴り付ける声と表情、物の破壊される騒音は鮮明に幼い私の眼から、耳から脳へと焼き付いていきました。

前回にも書いたように「家が片付いていない問題」以外にも、もちろん父が怒鳴ることはたくさんありました。

もっとより良い方法や相手に伝わりやすい言い方がたくさんあるはずなのに、父は人を脅して支配することを「自ら」選んだのです。

父が弱り、死ぬまで私の心は持つだろうか…?

家庭という閉鎖的な空間で我慢をする度に身体のどこかに軋轢を感じ、それでも生きていかねばと力を振り絞る度にピシッと身体にヒビの入る音が聞こえてくるのでした。