Episode02 家はいつだって戦場だ

さっきまで普通に喋っていたはずなのに…。

自分の部屋に逃げる暇もなく、その時は災害のように突如として訪れるのです。

私は生まれた時から父親が怒鳴り、物に当たり散らす環境で育ちました。

(これが面前DV、母にとっては精神的DVだと知るのは私が21歳の時でした。)

漫画で描いたのは父が頻繁に怒鳴っていた「家が片付いていない問題」の時の様子です。

母方の祖母が物を取っておきたがる、ごみ屋敷になるほどではありませんがいわゆる片付けられない性格であり、父は自分の気に入らないことがあれば祖母に直接文句を言うのではなく、間接的に母を怒鳴り付けて物に当たり憂さ晴らしをしていました。

(家が片付いていない問題の詳細は次回書こうと思います。)

父は頑固親父とは違って我が強いとか考えを曲げたくないとかではなく、怒る理由に一貫性が全くありません。

何が地雷となるのか予測が付くものではなく、身動きを取らずとも機嫌次第で足元が爆発して、私と母は何度も粉々に砕け散るのです。

父が怒鳴ったいくつかの例を紹介したいと思います。

隣の部屋で昼間であっても周りが賑やかに喋っていたり、ちょっと自分が寝ているときにビニール袋をかさかさしたりするだけでうるさいと怒鳴り物が壊れる。

私が大人しく無言でおもちゃで遊んでいても、おもちゃを回す音が気になって突然鉛筆でおもちゃを刺して壊す。

人が上手く、そして早く説明できないとキレる。

基本的に家庭内でしか本性を現さないのですが、立場の弱い店員や自分よりも知識がなさそうな従業員にはクレームを言い、納得のいく説明が出来るまで捲し立てる。

匂いにとても過敏で、嫌なはずなのにわざわざ家族の集まる台所へ来て曾祖母、祖父母の加齢臭を臭いと嫌みを言う。

母が気を遣って父が匂いを気にせず居間でご飯を食べられるように運んでくれているにも関わらずです。

買い物などで人がもたもたしたり家族の誰かの体調不良などで出掛けられなくなったりなど予定変更があると不機嫌になり、やめる、帰ると言い出す。

挙げ句の果てには自分だけ車で帰宅する振りをして私と母を一時的に置き去りにする。

他にも

ダイニングテーブルを斜めにして物を全部床に滑り落とす。

ストーブを蹴って壊す。

食べ物を放り投げる。

夜にブレーカーごと電気を落として脅す。

アパートのドアを蹴って壊す。

人の物を無許可で燃やす。捨てる。

たくさんの物が目の前で破壊され、母が怒鳴られるのを何度も見てきました。

父のやくざのような甲高い怒鳴り声と物がガタガタと破壊される音を聞くと、頭から地面に向けてエレベーターの重力がずんと思い切りかかったような鈍い衝撃が身体を押し潰すような感覚に見舞われます。

驚いて心臓がドキッとするのとは違うんです。

その突発的な激しい怒りに私は何が父にとって間違っていることなのか正しいことなのか分からなくなり、精神は蝕まれていきました。 恐怖から私の心はどんどんと萎縮していき、出来上がっていったのは不安症で大人しく物言えぬ子でした。